「一律賃上げ」が、会社を畳むカウントダウン。

毎年この時期になると同じ場面があります。

社長室に経理担当が来て、こう切り出します。
「社長、今年の賃上げ、どうしますか?」

テレビでは「今年も大手が5%超え」と流れています。
求人票を出せば、「給与は応相談」では問い合わせすら来ません。
去年採用した若手が、ちらっとスマホで転職サイトを見ていた気がする。

「……とりあえず、3%でいこうか。」

根拠はありません。 去年が2%だったから、少し多めに。
それだけです。

 上げた翌月に気づくこと

賃上げを発表した日、社員の反応は悪くありませんでした。
「ありがとうございます」と言ってくれた人もいました。

ただ、一人だけ、妙な顔をした社員がいました。
毎朝一番に来て、誰も気づかない仕事を拾い続けている、あの社員。

後で聞いたわけではありません。
でも、あの顔が引っかかっています。

「みんな、同じなんですね。」

そう言われた気がしました。

一律の何が問題か

現場はよく見ています。

・朝早く来て、黙々と仕事に取り組んでいる人
・言われたことしかやらない人
・なぜかいつも忙しそうだが、成果が見えない人

この違いを、社長よりも社員同士のほうが知っています。
それなのに、同じ額が振り込まれます。

頑張っている人間が最初に「ここにいる意味」を疑い始めます。
辞めるのは、だいたいこの層です。

そして抜けた穴を埋めるために、また採用コストがかかります。
一律賃上げのツケは、じわじわと、複数の場所から回ってきます。

公平と平等は、違います

「差をつけると不公平になる」
そう考える社長は多いです。 だから一律にする。みんな同じなら揉めない、と。

しかし社員が本当に求めているのは「平等」ではなく「公平」です。
頑張った人が報われる。 それが公平です。

全員同じは、平等に見えて、実は不公平です。
頑張っている社員ほど、そのことをよく知っています。

「誰を上げるか」を決められない本当の理由
ここで多くの社長が口にするのが、これです。

「うちは少人数だから、差をつけると角が立つ。」
「あいつも頑張ってはいるんだよ、見えにくいだけで。」
「評価で揉めるくらいなら、みんな同じにしたほうが楽だ。」

これは優しさではありません。 決断を先送りにしているだけです。

そしてその先送りは、毎年の人件費に静かに積み上がっていきます。
利益を削って分配しているだけの状態が、何年も続きます。
気づいたときには、固定費だけが膨らんでいます。

評価制度は、社長の覚悟を問う

誰に上げるか」を決めるためには、基準が必要です。

・何をやった人を評価するのか
・どのレベルなら給与に反映されるのか
・会社として、何を大切にしているのか

これを言語化することが、評価制度です。

便利なツールではありません。
「いい人でいたい」社長には、正直しんどい作業です。

誰を評価して、誰を据え置くのか。 それを社員の前に示すことになります。

波風を立てたくない、という状態では機能しません。
評価制度は、経営者の本気度を測る装置でもあります。

最後に

賃上げの時代です。
やらなければ、人は離れます。 しかし、やり方を間違えれば、会社が崩れます。

問われているのは「いくら上げるか」ではなく、 「誰に上げるか」です。
その判断を、逃げずに行えるかどうか。

そういう会社を、何社も見てきました。
制度とは、仕組みではありません。
会社の意思そのものです。

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