「人的資本経営」は中小企業こそ取り組むべき課題

今後の景気変動が予想される中で、特に明確なのは少子化による人材不足と、それに伴う人材獲得競争の激化です。特に若い世代は、仕事を選ぶ際に企業の価値観や働きやすさを重視する傾向が強いです。中小企業こそ、人的資本経営に積極的に取り組まなければ、人材獲得競争で不利になり、若い世代の従業員の定着も難しくなるでしょう。若い世代にとって魅力的な職場環境を提供するために、中小企業こそ人的資本経営に取り組むべきではないでしょうか

・人的資本経営のおさらい
・人的資本経営とは海外から入ってきた
・日米「人的経営」視点の違い
・ 人的資本経営が注目される背景
・人的資本の情報開示「ISO30414」
・人的資本の情報開示が求められる7分野19項目
・女性活躍がカギ
・中小企業こそ人的資本経営を推進すべし
・若い世代に支持される企業に今から準備を

的資本経営についておさらい

人的資本経営とは、従業員のスキル、知識、意欲といった能力を、組織の持続的な競争力の源泉として捉え、最大限に活用する経営手法です。

経営者は、従業員の成長を積極的に支援し、学習機会を提供することで、組織全体の生産性やイノベーションを向上させます。

具体的には、適切なトレーニングや育成プログラムを導入し、従業員の能力開発を促進するとともに、高いモチベーションを維持できる環境を整備します。

従業員が自己成長を実感し、組織への貢献を感じることこそが、人的資本経営の核心です。これにより、組織は変化に柔軟に対応できるようになり、企業としての適応力を高めることができます。 人的資本経営は、従業員と組織の双方に利益をもたらす戦略であり、企業の長期的な成功に不可欠な要素と言えるでしょう。

人的資本経営は海外から入ってきた

近年、日本で注目されている人的資本経営は、海外からの影響を大きく受けています。

海外企業の成功事例やグローバルなビジネス環境への対応が、日本の経営者に新たな視点を提供しています。その結果、従業員のスキル向上や働き方改革、多様性の尊重などがより重視されるようになり、組織全体の競争力向上へとつながっています。

国際的な人的資本経営のノウハウやベストプラクティスが導入されることで、日本の企業文化に変革がもたらされつつあります。この流れは、企業がグローバル市場で競争し続けるために、人的資本を最大限に活かす必要性を強く示唆しています。

日米における「人的経営」視点の違い

海外では、人を「資産」と見なす戦略的かつ長期的な視点が強調される一方で、日本においては、人を「コスト」と見なす傾向が、効率性やコスト削減の追求に影響を与えてきました。

欧米では人を資産として捉える

欧米企業では、従業員は組織にとって重要な資産であり、トレーニングやスキル向上への投資は将来の成果に繋がると考えられています。従業員の成長を促進し、個々の強みを最大限に活かすことが重視されています

日本企業はコストとして捉える

一方、日本企業は人的リソースをコストと見なし、効率化やコスト削減に重点を置く傾向がありました。長らく雇用の安定性や終身雇用制度が一般的であったため、その文脈においてコストとしての考え方が根付いてきたと言えるでしょう。

海外と日本における人に対する考え方の違いは、経済や社会の構造、経営文化の違いに起因します。しかし、近年、日本でも働き方改革が進む中で、人を資産として最大限に活かす視点へと変化しつつあります。柔軟な雇用形態やスキルの重視が強調され、従業員の成長と組織の成果を両立させる方向へと向かっています。

人的資本経営が注目される背景

日本において人的資本経営が注目されるようになった背景には、主に以下の要因が挙げられます。
グローバル競争の激化
国際的な競争が激化する中で、企業は高度な人材を確保し、効果的に活用する必要に迫られています。人的資本経営は、グローバルな競争環境において優秀な人材を惹きつけ、維持し、戦略的な優位性を確立するための手段として重要視されています。

技術の進化とイノベーションの要求
技術の進歩や急速な変化に対応するためには、従業員が常に新しいスキルや知識を習得し、柔軟に対応できる能力が求められます。人的資本経営は、従業員の能力向上とイノベーションを促進する手段として注目されています。

労働市場の変化
若年層の働き手が求める働き方の変化や多様性が進む中で、企業はそれらに適応していく必要に迫られています。柔軟性や多様性を尊重し、従業員のモチベーションを向上させる手段として、人的資本経営が重要視されています。

組織の持続可能性の追求
持続可能な成長を実現するためには、従業員の健康やスキル向上に焦点を当て、社会的責任を果たす姿勢が求められます。人的資本経営は、従業員のウェルビーイングやキャリア発展を通じて、企業の持続可能性を高める一環として重要視されています。

これらの要因が複合的に作用し、日本の企業が人的資本経営に取り組みつつある背景となっています。

人的資本とは、人を単なるコストとしてではなく、企業の成長にとって重要な、新たな事業を生み出す可能性を秘めた「資産」として捉える考え方です。

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人的若い世代に支持される企業に今から準備を

現代の若い世代は、仕事を選ぶ際に組織の価値観や働きやすさを重視する傾向が強い。人的資本経営に取り組まない中小企業は、競争激化の中で優秀な人材を獲得したり、若い世代の従業員を維持することがますます難しくなるだろう。

人的資本の情報開示義務は、大企業を対象に昨年3月から実施されているが、開示内容で満足に開示している企業は10%程度に過ぎないという調査結果もある。残りの9割の企業はまだ試行錯誤の中で開示を行っており、人的資本経営に対する理解が十分ではないことが伺える。大企業であっても、人的資産、ダイバーシティ、ジェンダー等の課題について、組織内に浸透させていくには時間がかかると考えられる。

人的資本経営で先進的な企業としては、エーザイ、オムロン、三井化学、味の素などが挙げられる。これらの企業は以前から人的資本経営に積極的に取り組んでおり、人に対する考え方は欧米企業の考え方に近いものがある。人的資本経営に本気で取り組むためには、人材に対する期待値と優先順位を上げていくことが重要だ。中小企業だから人材確保が難しい、人材が育たないというわけではない。人的資本経営の本質を理解し、若い世代に対して魅力的な職場環境をスピード感を持って構築していけば、人材確保の大きなチャンスとなる。中小企業にとって、これは千載一遇のチャンスと捉え、人材が主役となる組織作りを目指してみてはいかがだろうか。

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