定着率低下に潜む “気づかなかったサイン

「もっと早く気づけていれば…」その後悔を繰り返さないために

「辞めるって聞いて、驚きました」
「まさか、あの人が…」

そんな言葉を、あなたは何度、口にしたでしょうか。
退職の本当の理由を本人から直接聞くことは、そう多くありません。多くは、「一身上の都合です」「別の仕事にチャレンジしたくて」など、当たり障りのない言葉に包まれて終わります。 でも本当は、その前に──
「もっと早く気づけたことがあったのでは?」
と、後から振り返って気づく“サイン”があるのです

それは突然ではなく、“静かに始まっていた”

例えば──
・面談での表情がどこか浮かない
・雑談のトーンが以前より硬い
・突然の有休申請が増えてきた
・SlackやLINEでの反応が遅くなった
・ちょっとした業務指示に「はい」とだけ答えるようになった

これらは、一見すれば「疲れてるのかな」「元々そういう性格だし」で片付けられるサインです。
でも、離職した社員の“前兆”を思い返してみると、多くの共通点が見えてきます。

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彼は本当に、“技術の仕事がしたい”だけだったのか?

ある30代の男性社員が、突然、退職を申し出てきました。
彼は入社時から「技術職に就きたい」と希望していましたが、当時はスキルが十分ではなく、カスタマー部門からのスタートとなりました。

口数が少なく、人付き合いが得意ではないタイプ。
そんな彼が、ある日中期出張に出されました。

出張中、社長は直属の部長に確認します。
「彼、大丈夫かな?」
部長は「問題ないですよ」と答えた数日後。

──彼から退職届が出されたのです。
理由は、「やはり技術職に就きたい」と。

けれど社長は直感的に思いました。
これは“本当の理由ではない”と。

問い詰められた部長は、何も言いませんでした。
もしかしたら、日々の会話の中で、何か気づいていたのかもしれない。
でも、深く聞くことも、止めることもなかった。

結果、また一人、育てたかった人材が静かに去っていきました。

離職は“突然”ではなく、“無関心の積み重ね”で起きる

社員が去ってから、「もっと丁寧に話を聞いていれば…」と思っても、もう遅いのです。
定着率が下がる背景には、「制度の不備」や「待遇」だけでなく、“気づかなかったサイン”の見落としがあります。

「会社の未来に自分がどう関われるのか」
「上司は本当に自分を見てくれているのか」
「やりたいことと現実のギャップを誰にも言えない」

そうした“心のズレ”が積み重なっていき、
ある日「辞めます」と口に出すまで、本人は何度も迷っているのです。

「仕方ない」と言う前に、“仕組み”で向き合えることがある

人事評価制度は、給与を決めるためだけのものではありません。
社員の変化に早く気づき、対話を生む“きっかけ”をつくるものです。

上司と部下が「どこを目指しているのか」「何に困っているのか」を共有できる仕組みがあれば、
あの40代社員の退職も、もしかしたら防げたかもしれない。

人事評価は、社員の可能性や課題を“言語化”し、対話につなげる仕組みです。

いま、あなたの会社にも“静かなサイン”が潜んでいるかもしれません。
「仕方ない」ではなく、「まだ間に合う」のかもしれません。

次の離職が起きる前に、できることがあるとしたら──
それは“気づける仕組み”をつくることです。

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