等級×役割基準が“成長の地図”になる理由
プロローグ:9月号からの続き
前回(9月号)では、
「育った直後に辞める人がなぜ出るのか」についてお話ししました。
ポイントは、“育成”と“定着”は同じではないということ。
人は「できるようになった」だけでは残らない。
“これからどうなれるのか”が見えるときに残る。
その視点を、今月はさらに深掘りします。
テーマは――
等級 × 役割基準。
評価制度の世界ではおなじみの言葉ですが、
この「等級」と「役割」が実は“社員の未来設計図”になると聞いたら、
少し興味が湧きませんか?
1. 3〜4年目社員が辞める「静かな合図」
ある中堅社員が、こんなことを言いました。
「別に不満はないんです。ただ、
このまま5年目、6年目になったとき、
自分が何を目指すのか、もう見えなくて。」
社長や上司から見れば「戦力になった」と思える時期。
でも本人から見れば、
“できるようになったけど、変わらなくなった時期” です。
このズレが、静かな退職の引き金になります。
ここで必要なのが、**「役割基準」**です。
いま自分がどんな役割を担っていて、
次にどんな期待が待っているのか。
人は、「未来の地図」を見せられたとき、もう一段上を目指す意欲を取り戻します。
2. 等級とは“立場の定義”ではなく、“成長段階の指標”
多くの会社では、等級は「役職」や「給与テーブル」と同義に扱われています。
でも、本来の等級は “成長段階の指標” です。
たとえば──
| 等級 | 状態 | 求められる役割 |
|---|---|---|
| 2等級 | 一人で仕事を回せる | 再現性を高める |
| 3等級 | 任された範囲で成果を出せる | 他者に関与し始める |
| 4等級 | チーム成果を生み出す | メンバーを導く |
この表があるだけで、
社員は「いま何を磨けば次に進めるか」がわかります。
そして、上司も「どんな支援をすればよいか」が明確になります。
つまり、
等級とは“人を序列化する道具”ではなく、“成長を設計する仕組み” なのです。
3. 「役割基準」がないと、人は止まる
役割基準は、“未来の地図”そのものです。
これがないと、社員は自分の立ち位置を失います。
ある建設会社の若手社員が、面談でこんな言葉を残しました。
「結局、自分は何を期待されてるのか、わからないんです。
どこまでやったら一人前と言えるのか、誰も教えてくれない。」
これが“停滞”の始まりです。
本人のやる気ではなく、組織設計の欠落が原因です。
逆に、役割基準がある会社では、
上司がこう言えるようになります。
「いまは“任せられたことを確実にこなす力”をつける段階。
次の段階では、“自分の判断で段取りを組める力”を磨こう。」
この「言葉の地図」を持っているかどうかで、
社員の5年目以降の伸び方が決まります。
4. 成長を支える“地図”をつくる3つのステップ
1️⃣ いまの等級を定義する
→「できること」ではなく「果たしている役割」で線を引く。
2️⃣ 次に進むための基準を明確にする
→「何ができれば次へ進めるのか」を見える化。
3️⃣ 上司の言葉に落とし込む
→ 評価表より前に、“上司のフィードバック言語”を揃える。
これだけで、会社に“成長の共通言語”が生まれます。
5. まとめ──「役割の地図」を見せる会社に人は残る
社員は、成長実感を求めています。
でもその実感は、仕事の量や年数ではなく、
「役割が広がること」 で生まれます。
3〜5年目で辞める社員が多い会社は、
“評価”の前に“役割の地図”が欠けている。
逆に、そこを言語化した会社は、
「人が育ち、辞めなくなる」会社に変わります。





