上司力が会社の定着率を決める──

「優しいだけ / 厳しいだけ」から抜け出す評価設計

プロローグ

ある中小企業でよくある光景です。

部下がミスをしたとき、
A課長はこう言います。

「大丈夫、大丈夫。次、気をつけてな。」

言い方はやわらかい。
怒られない。
一見、居心地は良い。

しかし数ヶ月後、部下はこう感じはじめます。

「任されていない」
「自分が成長している実感がない」

結果、その部下は転職を考え始めます。

一方で、B課長。

「なんでそんなこともできないんだ!」
「何回言わせるんだ!」

声は大きい。
結果は出す。
でも、部下は疲弊する。

A課長の下では“人は辞めないが育たない”。
B課長の下では“人は育つが辞める”。

この“両極”が、現場にいつも存在します。

そして多くの社長はこう言います。

「うちの管理職は、人はいいんだけど、育てられないんだよな…。」

でも、それは 上司の「性格」が問題ではありません。
会社として、上司が“どう接するべきか”の基準を持たせていないだけです。

上司力はセンスではない。
再現できる“技術”です。

1. 「人がいい管理職」が育成できない構造

例えば、あなたの会社でもこういう会話、ありませんか?

社長:
〇〇くん、あの新入社員、どう育ってる?

管理職:
いやぁ…頑張ってますよ。様子見てます。

「様子見てます」ほど、危ない言葉はない。

なぜなら、

  • 何を
  • どこまで
  • どんな基準で

育てるかが 曖昧なまま だから。

結果、
部下は「自分は成長しているのか?」がわからない。

人は「成長実感」がなくなると、
優しい職場でも辞めます。

2. 上司力を “曖昧語” から “行動” へ落とし直す

「もっと主体的に」
「考えて動け」
「任せたいんだよ」

これらは 抽象語 です。

部下にはこう聞こえます。

「どうしたらいいかは自分で考えてね」

そりゃ動けない。

中小企業で機能するのは「具体」だけです。

例:
「任せる」は、こう具体化できる。

抽象具体(行動レベル)
任せる「段取りを一緒に10分でつくる」
育てる「週1で5分の進捗共有をする」
主体性「迷ったときの判断の“優先順”を言語化する」

部下は、
言葉ではなく、“行動の設計”で動くようになります。

3. 上司力の評価は「性格」ではなく「習慣」で測る

「人間性で評価するのでは?」
とよく聞かれます。

違います。

上司力は 習慣 で評価できます。

例:評価に入れるべき上司の行動

行動習慣チェック方法効果
週1で部下と対話(10分でOK)チームの予定表で確認指示待ちが減る
叱る時は「行動」と「人格」を分ける叱り方ロールプレイ退職の芽を摘む
任せた仕事の“意図”を伝える業務計画シートで確認自走力がつく

大切なのは、
「できる・できない」を白黒つけるのではなく、あくまで“見える化”すること。

4. 上司力が上がると、なぜ定着率が上がるのか

辞める時、人はこう言います。

「人間関係が…」
「成長が…」
「会社の方向性が…」

でも根っこはいつも同じです。

“見てくれていない感”です。

人は、
「理解されている」
「期待されている」
「成長している」

と感じられる場所には残ります。

つまり、

辞める理由=上司との関係の質
残る理由=上司との関係の質

人事制度でも福利厚生でもない。
上司力が会社の定着率を決めています。

5. だから研修より先に「評価項目」を変える

管理職研修をしても、

  • 何をできるようになるべきか
  • どこが達成ラインか

が見えていなければ、
“聞いて終わり” になります。

順番は明確です。

① 上司に求める役割基準を言語化
② それを評価項目に入れる
③ 研修で伸ばす

これが 最も早く、現場が変わる順番 です。

まとめ

優しいだけの上司は、部下を甘やかす。
厳しいだけの上司は、部下を疲れさせる。

でも、
導ける上司は、部下の未来を見ている。

組織は「仕組み」でしか変わりません。
仕組みが変われば、人は変わります。

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