その人は、本当に「そういう人」ですか

〜評価制度は、人を決めつけるためではなく、人を育てるためにある。〜

採用活動で、多くの企業が利用しているSPI。
ご存じの方も多いと思いますが、「言語」「非言語」「適性」の3つで構成されています。
採用時に、その人の傾向を知る参考資料として、とても有効だと思っています。

ただ、一つだけ気を付けなければならないことがあります。
適性を過信しないことです。

かなり以前になりますが、
日本生命の研修担当責任者の方から、こんな話を聞いたことがあります。
営業で素晴らしい実績を上げている社員を対象に、あらためて適性検査を分析してみたそうです。

すると意外なことに、
「営業向き」
という結果は、それほど多くなかった。
その方はこう言われました。

「人は15%くらいは適性かもしれない。でも、残りの85%は育ってきた環境なんです。」

この言葉が今でも印象に残っています。

人は、環境によって変わる。

以前、ある製造業のクライアントで、こんな社員がいました。

新卒3年目、会議で意見を求められても、ずっとうつむいたままの若手です。
ところが、ある工場長が彼に「新人教育係」を任せました。
半年後、彼は後輩の前で堂々と手順を説明し、

「彼に教わってよかった」と、後輩から名指しで感謝される存在になっていました。
本人の性格が変わったわけではありません。
任された役割が、彼を変えたのです

何が変わったのか。
能力でしょうか。
性格でしょうか。
もちろん、それも多少はあります。
しかし、それ以上に大きいのは、
環境です。

どんな上司と出会ったのか。
どんな仕事を任されたのか。
どんな仲間と働いてきたのか。
挑戦を応援してくれる環境だったのか。
成功体験を積めたのか。

人は、その環境によって大きく変わります。
だから、
「この人は向いていない。」
と、簡単に人を決めつけてしまうことに、
いつも危うさを感じています。
そんなに簡単に、決めつけていいのでしょうか。

見ているのは、仕事なのか、人なのか。

これは、人事評価制度でも同じことが言えます。
評価制度を運用している会社で、
こんな言葉を耳にします。

「あの社員は責任感がない。」
「あの社員はミスが多い。」
「あの社員は積極性がない。」
そのときに、必ず聞き返すようにしています。

「それは、今回の評価期間の話ですか。」
「それとも、その人のイメージですか。」

すると、多くの場合、
過去の出来事や印象が混ざっています。

一度、
「遅刻が多い社員」
という印象を持つと、
その後きちんと改善していても、
「あの社員は時間にルーズ。」
という見方が残ってしまいます。

ミスが続いた社員も同じです。
改善していても、
「また、あの社員か。」
そんな目で見られてしまうことがあります。

つまり、
評価しているつもりが、
いつの間にか、
人を評価してしまっている。

本来見るべきなのは、
人格ではありません。
その期間に、
どんな役割を担い、
どんな行動を取り、
どんな成果につながったのか。

評価制度は、
そこを見るための仕組みです。

評価制度は、人を変えようとする仕組みではない。

評価制度を設計するとき、
いつも考えていることがあります。

「どうすれば、この人がもっと成長できる環境をつくれるだろう。」

ということです。

評価制度は、
社員を順位付けするためでも、
能力を決めつけるためでもありません。

社員が成長するために、
会社はどんな役割を任せるのか。
上司はどんな関わり方をするのか。

何を期待し、
何を支援するのか。
それを会社と社員が共有するための仕組みです。

評価制度そのものが人を育てるのではありません。

評価制度を通じて、「人が育つ環境」をつくること。
そこに、本当の意味があります。

「そういう人だから」で終わらせない。

評価制度を運用していると、
つい、
「あの社員は、そういう人だから。」
と言いたくなることがあります。

でも、その一言で、
社員の可能性を閉ざしてしまうこともあります。

人は変わります。
正確に言えば、

人は、環境によって変わります。

だからこそ、
評価制度は、
社員を決めつけるためではなく、
社員の変化を見つけるために存在する。
そう考えています。

評価制度は、社員を評価するための道具ではありません。
社員が育つ環境を、会社がどうつくるか。

その問いに答え続けるための道具だと思っています。

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