部下を見る時間がない。それでも評価制度は必要?

人事評価制度の導入を検討している企業から、こんな話を聞くことがあります。
「ウチの管理職もご多分にもれず、自分の仕事を抱えていて、部下を見る時間がないんです」
「面談の時間を確保するだけでも難しいのに、評価制度を導入して本当に運用できるのでしょうか」

人手が足りない。
管理職は自分の仕事に追われている。
部下と落ち着いて話す時間がない。

このような状態で評価制度を導入すれば、管理職の負担がさらに増えるのではないか。
そう考えるのも無理はありません。

実際に、評価項目を細かく作り、何度も面談を行い、
大量のコメントを書かせるような制度を導入すれば、
管理職の負担は間違いなく増えます。

導入した直後は何とか運用できても、
少しずつ形だけになり、
やがて評価シートを提出すること自体が目的になってしまいます。

でもよく考えると、これは評価制度そのものの問題ではなく、
現場の状況を見ずに制度を作ったことが問題なのです。

評価制度がないから、責任感が生まれないのか

評価制度がない企業では、次のような問題が起きることがあります。

・仕事を頑張っても、何が評価されているのか分からない。
・ミスをしても、その後の指導や改善につながっていない。
・社員に何を期待しているのか、上司によって言うことが違う。
・昇給や昇格が、どのように決まっているのか分からない。

こうした状態が続けば、仕事に対する社員の意欲や責任感が薄れていくことはあります。
だからといって、ミスをした社員を減点する仕組みを作れば、責任感が生まれるわけでもありません。

むしろ、減点されることを恐れて、ミスを報告しなくなる可能性すらもあります。
評価すべきなのは、ミスをしたかどうかだけではありません。

・ミスを防ぐために、どのような改善策を考えたのか。
・問題が起きたとき、すぐに報告する重要性を話し合ったのか。
・原因を振り返り、同じことを繰り返さないために何を改善したのか。
ここまで見なければ、評価制度は社員を責めるための単なる道具になってしまいます。

責任感とは、失敗しないことではなくて、
自分の仕事に向き合い、問題が起きたときに放置せず、改善まで行うことです。
会社が求める責任感とは何か。
まず、それを具体的に言葉にする必要があります。

「社員が成長していない」だけでは評価できない

経営者や管理職から、
「社員がなかなか成長しない」
という話を聞くこともあります。

ただ、「成長」という言葉の受け止め方は、人によって違います。
・言われたことを正確にできるようになることなのか。
・自分で考えて動けるようになることなのか。
・後輩を指導できるようになることなのか。
・問題に気づき、改善を提案できるようになることなのか。
会社が求める成長の姿が明確になっていなければ、社員もどこを目指せばよいのか分かりません。

成長基準が曖昧であれば、
管理職も、自分の経験や感覚で部下を見るようになります。
ある上司は積極性を評価し、ある上司は正確さを評価する。
同じように仕事をしていても、上司によって評価が変わる。
これでは、社員が評価に納得できないのも当然です。

評価制度は、社員を点数で振り分ける前に、
会社が求めている社員の成長指標を明確にする必要があります。

評価項目は“増やせばいい”というものではない。

管理職に時間の余裕がない会社では、
評価項目を増やせば、部下をきちんと見られるようになると思われがちです。

しかし、実際は逆なんです。

評価項目を単に増やしても混乱を招くだけ。
確認できない項目をいくら並べても、最後は管理職の印象で点数をつけることになります。

「おそらくできているだろう」
「普段から真面目だから、このくらいだろう」
このような評価が増えれば、立派な評価シートがあっても、中身は以前と変わりません。

大切なのは、項目の多さではなくて、
評価項目が、その会社の日常の仕事の中で実際に確認できる内容になっているかどうかです。
新たに評価のために仕事を大量に増やすのではなく、
日頃行っている報告、会議、業務確認、面談などを評価につなげていく。

そのうえで、会社として特に見てほしい行動や成果に絞る。
忙しい会社ほど、評価制度を細かく作りすぎないことが重要です。

評価制度が、管理職の代わりをするわけではない

じゃあ評価制度を導入すれば、管理職が部下を見なくてもよくなるわけではなくて、
制度が人を育てるのでもありません。
人を育てるのは、日々の仕事と、その仕事に対する上司からの働きかけです。

ただし、評価制度があれば、
「部下の何を見ればよいのか」
「何を本人に伝えればよいのか」
「次にどのような成長を期待するのか」
が整理されます。

つまり評価制度は、管理職の代わりをするものではなく、
忙しい管理職が部下を見る視点を揃えるためのものです。

上司が部下のすべてを見ることはできません。
だからこそ、何を見るのかを決めなければなりません。

制度を作る前に、現場を見なければならない

評価制度を作るとき、一般的な評価項目をそのまま当てはめても、なかなかうまくいきません。
会社によって、仕事の進め方も、組織体制も、管理職が抱えている人数も違います。

現場で働く社員と、本社で働く社員では、日頃の仕事の見え方も異なります。
営業、事務、管理、専門職など、職種によって求められる責任や成果も違います。
社員に求めるものだけでなく、管理職が実際にどこまで部下を見られるのかも確認する必要があります。

繰り返しますが、
人事評価制度は、評価項目から作り始めるものではありません。
現在の組織体制、仕事の流れ、管理職の役割、社員に期待することを整理したうえで、
その会社で運用できるカタチにしていくものです。

必要なのは、立派な制度ではない

人手が足りないから、評価制度を導入できない。
管理職が忙しいから、部下を育てられない。

そのように考えて、評価制度を先送りしている企業もあります。
しかし、人手が足りず、管理職にも余裕がない会社ほど、
社員一人ひとりに何を期待し、何を見ていくのかを曖昧なままにはできません。

誰が何を担うのか。
どこまでできれば、次の役割を任せられるのか。
会社は、社員のどのような行動や成果を評価するのか。

これらが明確になっていなければ、管理職の負担はいつまでも減りません。
必要なのは、項目の多い立派な評価制度ではなく、
その会社の現場で無理なく運用でき、社員に何を期待しているのかが伝わる評価制度です。

評価制度は、社員に点数をつけるためだけの制度ではなく、
社員の成長と会社の成長を、日々の仕事の中でつなげていくための
制度だと思うのですが。

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