「彼は仕事ができる」
会社の中では、よく使う言葉です。
では、仕事ができるって、会社はどういう物差しで見ているのでしょう。
仕事が速い。
ミスが少ない。
資料をきれいに作る。
頼んだことをきちんとやる。
知識が豊富。
経験がある。
もちろん、どれも大切なんですが。
でも最近、気になるんです。
そういう人だけが「仕事ができる人」なんだろうかと。
たとえば、上司から資料を作ってと依頼された。
Aは、非常に仕事が速い。
必要な情報を集め、きれいにまとめて、期限より早く提出する。
上司からすると、とても使いやすい部下です。
一方、Bはすぐに作り始めなくて、
この資料、何に使うんですか?
と聞いてくる。
目的を聞いたうえで、
それなら、この資料を作るより、先にお客様にここを確認した方がよくないですか?
と言う。
場合によっては、
この資料、作らなくてもいいと思います。
なんて言ってくる。
どちらが仕事のできる社員なのでしょう。
これまでなら、Aの方が評価されやすかったかもしれない。
頼んだ仕事を、速く、正確に、きれいに仕上げる。
何より、評価しやすい。
Bは、すぐに仕事に取りかからない。
質問してくる。
目的を確認する。
時には上司の指示そのものに疑問を持つ。
会社にとって価値があるのは、どちらなんでしょう?
ここに、評価の難しさがあるように思います。
仕事のできる社員というと、
同じ仕事を、他の人より早くできる人。
ほとんどはそう思うはずです。
10時間かかっていた仕事を、工夫して5時間で終わらせる。
これは間違いなく優秀です。
会社も評価しやすい。
業務効率を50%改善した
数字にも出てきます。
ところが、もう一人、
10時間かかっていた仕事を、ゼロ時間にする人がいた。
どういうことか。
この仕事、そもそも何のためにやっているんですか?
と聞く人です。
話してみると、
それなら、この作業自体いらないんじゃないですか?
となる。
10時間を5時間にした人、10時間をゼロにした人
10時間を5時間にした人は、
今ある仕事を改善した人。
10時間をゼロにした人は、
今ある仕事を疑った人。
似ているようで、これはまったく違う能力だと思うんです。
ここに、評価のちょっとした落とし穴があります。
会社は「やったこと」を評価するのは得意だけれど、「やらなくてよくしたこと」を評価するのは苦手です。
もっと言えば、
会社にとって価値のある人ほど、仕事を減らしている可能性さえあります。
でも、仕事を減らした人より、目の前にある仕事をこなしている人の方が、
頑張っているように見える。
ここが怖いところです。
仕事には、
うまくやる
と、
何をやるかを考える
があります。
これまで多くの会社が評価してきたのは、前者だったのではないでしょうか。
つまり、
与えられた仕事を、どれだけ上手にこなせるか。
ところが、仕事のできる人って、ときどき仕事をしないんです。
サボっているという意味ではありません。
これはやらなくていい
と判断するんです。
間違った方向へ一生懸命走るより、その前に、
こっちじゃないですよ
と言う。
みんなが当たり前のように続けている仕事を見て、
なんでこれ、やっているんだろう?
と考える。
でも、こういう人って会社にとって、面倒な人なんです。
昔からやっているから
他の部署もやっているから
「いいから、まず言われた通りやって」
そう言われる。
何度かそれを繰り返されれば、その社員もだんだん言わなくなります。
疑問を持たない。
余計なことを考えない。
言われたことを、ちゃんとやる。
そして会社は、そんな社員を見て、
最近の社員は、自分で考えないと言う。
でも、もしかすると順番が逆なのかもしれません。
会社が「考えない人」を育ててきたのかもしれない
ここで経営者の方に、
自社の人事評価表を一度見てもらいたいです。
そこに書かれている評価項目は、
「ちゃんとやる人」を評価する項目ばかりになっていないでしょうか。
指示を守る。
期限を守る。
正確に処理する。
報告する。
知識を身につける。
もちろん、どれも必要です。
でも、
そもそも必要かを考える
目的から仕事を考える
おかしいことに気づく
今までのやり方を疑う
上司とは違う意見でも、自分の考えを伝える
こういうことは、評価されているでしょうか。
もっと怖いのは、
評価されていないだけならまだしも、
会社がそれを「余計なこと」として潰している可能性です。
人事評価は、社員を評価するためだけのものではありません。
会社が、
うちでは、こういう人を仕事ができる人と考えています。
と社員に伝えるものでもあります。
だとしたら、人を評価する前に、一度考えてみてもいいのではないでしょうか。
会社が何を「仕事ができる」と呼んでいるのか。
10時間の仕事を5時間で終わらせた人を評価する。
それはもちろん大切です。
でも、その横に、
この10時間、本当に必要ですか?
と言った社員がいたとしたら。
その人を、
あなたの会社はどう評価するのでしょうか。





